このたび、第115回日本消化器内視鏡学会近畿支部例会の会長を拝命いたしました、近畿大学医学部消化器内科の辻直子と申します。1978年に第20回支部例会を主催された鮫島美子先生以来、実に47年ぶりに女性としてこの大役を務めさせていただくこととなりました。歴史ある近畿支部例会のバトンを受け継ぐにあたり、伝統の重みを深く感じております。このような貴重な機会をお与えくださいました藤原靖弘支部長、内藤裕二前支部長、ならびに幹事・評議員の先生方に、心より御礼申し上げます。
昭和の時代、消化器内視鏡は主に診断目的に用いられていました。平成に入り、拡大観察や特殊光、ESDの登場によって、診断から治療へとその役割は飛躍的に拡大しました。そして令和のいま、AIや新たな処置具の導入が進み、内視鏡診療はさらなる革新の時代を迎えています。本例会では、こうした“時代の流れ”を踏まえたプログラム構成といたしました。
シンポジウムは4セッションを予定しております。「日本人の胃は変わったか?」「腸は変わったか?」という問いを軸に、H. pylori感染率や生活習慣の変化、画像診断や低侵襲治療技術の進歩をふまえ、上部・下部消化管腫瘍診療の変遷と将来の展望を多角的に議論します。加えて、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の内視鏡診療の進化、さらには胆膵腫瘍に対する診断・治療およびインターベンション技術の進展についても、時代の移り変わりとともに再検討する機会としたいと考えております。
パネルディスカッションでは、近年その意義が再認識されている進行悪性腫瘍や、疾患概念・診療技術が進化を続ける炎症性肝胆膵疾患、そしてUC・CDを除く稀少な炎症性消化管疾患をテーマとし、現場での実践と工夫に基づく多様な発表を期待しています。時代が変わっても、現場の知恵と工夫は臨床の大切な礎です。症例報告や少数例の検討も歓迎し、日常診療に根ざしたリアルなご発表をお待ちしております。
さらにワークショップでは、少子高齢化社会における診療体制の課題や、SNSを活用した情報発信・キャリア支援など、“令和の医療”にふさわしい働き方やコミュニケーションのあり方について、世代や立場を越えた率直な議論の場を提供できればと考えております。
本例会が、昭和の情熱、平成の躍動、そして令和の未来へとつながる内視鏡診療の歩みを再確認し、次世代の医療を共に創る一助となることを心より願っております。多くの先生方の積極的な演題応募とご参加を、心よりお待ち申し上げます。
第115回日本消化器内視鏡学会近畿支部例会
会長 辻 直子
(近畿大学医学部 消化器内科 臨床教授)